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13年越しでお客様のお言葉を理解できた?

まだ私が金券ショップのルーキーだった頃、あるお客様に

(お手持ちの商品券を見せながら)ここに1000円と書いてあるんだから、
1000円で買い取ってくれなきゃおかしいのちゃうん?
(原文ママ)」

と言われ、血管が切れそうになる位の感情の高まりを覚えた事があります。
金券屋を全否定された気がして。その「隙間」で喰っていく商売なのに。
当時私は32歳。唸る寸前で押し留まり、ショーケースを指さして
「980円で売ってますので1000円のお買取りは無理です」
と言ったんじゃなかったかな。それでもお客様は納得されていないようで
ずっと何かを呟きながらお帰りになりました。

最近までずっとこのお客様の事を、「宇宙から●●を受信している人」
位にしか思っていなかったんですよ(すごく失礼)。
980円で売っているものを1000円で買い取れないのは世界の常識で、
1000円の日本円と1000円の百貨店共通商品券(でした)、
どっちに価値があるかなんて少し考えれば分かる事なんで。
でも、最近はこうも考えるようになりまして。

恐らく大多数のお客様は、お買取りの取引を承諾するかしないかを
手に出来る金額」と「手放す事を自分自身が納得できるか」の
両方で判断されているんじゃないかな、と。

「納得できるか、できないか」はお客様によって千差万別です。
「もう使わないからいくらでもいいや」ならどの額を提示されてもお手放しになるでしょう。
「金額によっては売っちゃってもいいかな」なら査定金額次第の是非になります。
「売ろうか…いやまだ残しておきたいな」であれば、
査定金額の多寡で成約に持っていくのは極めて困難になります。

そこで先述のお客様が自身の所有物の事を、
「自分で使えばちゃんと1000円使える、お釣りも出るポイントも付く」
とお考えなら、「現金1000円との交換なら置いていくよ?」となる訳で、
そこに「1000円で中古券買うなら百貨店に並んで新品買うわ」とか、
「ならご自身で使ったら?」とかの一般的なお話とはまた別次元なのでしょう。

じゃんけんで100%勝ち続ける人がいないように、
お客様のお気持ちを100%読める古物商はいない筈です。
「これは世間の相場が●円だから●円以上は無理っすよ」と言っても、
「今、服なんてタダで置いていく世界なんだから」と言っても、
お客様の「手放す事に納得できるか否か」によっては全然意味も結果も異なるわけで。

「相場なんて知らんがな、100万買ったんやからせめて半額出せ、足元見やがって」
と極めて厳しいお叱りを頂戴する場合もあれば、
「今は捨てるのもお金掛かるからいいわ、ありがとう」と感謝される場合もあるんです。

これから先10年後とかに同じ話の事を考えたら、私はどう結論を出すのだろう…。

by kinkenya-kobutu | 2015-02-21 17:58 | 古物商としての葛藤 | Comments(0)